オランダ第三の都市、「デン・ハーグ」にあるマウリッツハイス美術館へ行ってきました。マウリッツハイス美術館にまつわるちょっとした知識や、雰囲気、必見の絵画作品等をサクッとご紹介します。
「ビネンホフ」の一角に佇むこじんまりとした美術館には、フェルメールの傑作である『真珠の耳飾りの少女』や『デルフトの眺望』を筆頭にルーベンスやレンブラントなどなどオランダ絵画黄金期の名画が数々所蔵されています。落ち着いた雰囲気の中で贅沢な時間を過ごすべく、足を運んでみましょう!
【訪問時:2020.2】
アクセス
オランダ・アムステルダムからマウリッツハイス美術館は車・電車ともに約1時間。自転車では3時間で行く事が可能です。
参考予算:アムステルダム⇆デン・ハーグ(鉄道) 片道平均13.30€
※ 鉄道の場合、マウリッツハイス美術館へのアクセスには「デン・ハーグHS駅」でなく「デン・ハーグ セントラル駅」を利用しましょう。しかし、「デン・ハーグHS駅」までしか通らない電車が多いため、「デン・ハーグHS駅」で降りることとなっても、そこから散歩がてら歩いて行くことも可能で、トラムもあります。
私はデン・ハーグHS駅にやってきました。デルフトから約15分でたどり着きます。30分ほど歩いてマウリッツハイス美術館に向かうことに。
マウリッツハイス美術館は「ビネンホフ」と呼ばれる13世紀から17世紀にかけての建物が集まっているエリアの一角にあります。
美術館の建物にもぜひ注目してみましょう。マウリッツハイス美術館は17世紀にヨーハン・マウリッツ伯爵の私邸として建設されました。ルネッサンス風の美しい建物が目を惹きます。
インフォメーション
マウリッツハイス美術館(Mauritshuis )
・開館時間
月曜日 13 am – 6 pm
火曜日~日曜日 10 am – 6 pm
木曜日 10 am – 8 pm
・入館料
15.5 ※団体(15名以上)… €14 子供(18歳以下)… 無料
・オーディオガイド
3.5 € ※オーディオガイドも良いですが、スマートフォンのAppをダウンロードすればガイドがわりになります。事前にダウンロードすることも可。
所要時間
参考程度に示すと、一時間〜二時間程度です。
じっくりみたい方ならじっくり鑑賞できますし、サクッとみたい方ならこじんまりした美術館なので一時間あれば十分全てを見回るとができる大きさだと思います。
ただ混み具合によってチケット購入時に並ぶ可能性が無いとは言い切れないので、時間に余裕がない方は事前予約も検討してみましょう。
マウリッツハイス美術館を巡る
B1階のレセプション
チケット売り場やエントランスはB1にあります。なので、地下に続く階段の窓からはこのような光景が。
すぐそばには「ビネンホフ」に面するホフ池の水が迫って見えます。これは運河ではなく池の水ですが、運河の街オランダらしい光景ですよね。
B1にはチケット売り場やクローク、お土産ブースに上階の展示ブースへと続く入り口があります。歴史のあるどっしりとした佇まいの外装とは違い、モダンでさっぱりとした内装が印象的です。
レセプションカウンターの隣にはクロークがあり、無料で荷物やコートを預かっていただけます。流石にスーツケース等はもって入館できない可能性が高いですが、おそらく25L〜30Lのバックパックくらいまでなら大丈夫です。(※参考程度に、イギリスの博物館等は大きめのバックパックからダメです)
チケットやパンフレットはフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』を前面に押し出していますね!これから実物に出会えると思うとワクワク♪
それでは早速、上階にのぼって、名画の数々を鑑賞しましょう。せっかくなので、ぜひいくつか名画を紹介させてください。
名画の数々
フロアを一つ上がります。階段がある広間を中心に小部屋がいくつか周りにある、というような作りになっていて、どこから見ようか迷ってしまいます。結構こじんまりとした美術館なのですが、名作がぎゅっと詰まっていて見応えがあります!
※紹介する作品の制作年は参考程度に記載しています。
ヴィレム・ファン・ハーヒト:『カンパスペを描くアペレス』(1600頃)
古代ギリシアの画家であるアペレスがカンパスペを描いている、という作品です。アペレスは古代世界で最も偉大な画家と言われ、カンパスペはアレクサンドロス3世の情婦らしいです。なのにもかかわらず、彼のアトリエに飾られている作品はルーベンスの作品等であり、時代錯誤が面白い作品です。アトリエに飾られる一枚一枚の作品も丁寧に描き込まれていて目を凝らしてみたくなりますね。
ヴィレム・ファン・ハーヒトの作品は3作品のみ現存しているらしく、そのうちの貴重な一作品です。
ダフィット・テニールス:『The Younger Kitchen Scene』(1644)
フランドルの画家であるダフィットですが、花のブリューゲルとして知られるヤン・ブリューゲルの娘と結婚しています。(すごい繋がり)農民の祭りや日々の様子、酒屋や台所など、大衆的な絵画で知られています。
この作品は見ての通りその台所を描いた作品ですね。当時の雰囲気が伝わってきます。
美しい内装
マウリッツハイス美術館、注目すべきは名画の数々や外装にとどまらず、美しい内装も注目すべきポイントです!注目しようと思わなくても、マウリッツハイス美術館に足を踏み入れば、いつの間にかその美しい空間に惹きこまれていることでしょう。
こちらは、その一室。先ほどもちらっとご紹介しましたが、美術館の作りとして、階段が中心にあり周りに長方形の広間、そして広間からいくつかの小部屋に向かう入り口が囲うようにしてあるという形です。
一部屋一部屋雰囲気が違って、壁の色や柄、カーテンや窓からの景色で楽しませてくれます。窓からは「ビネンホフ」の一角が見えて、一つの作品のよう。
落ち着いた美術館の雰囲気が伝わるかと思います。
それでは、大階段を登って最上階に行ってみましょう。
最上階に上がると、美しい作品に囲まれた豪華なお部屋が私たちを待っています。
作品の魅せ方が上手ですね。壁の色や柄も一部屋一部屋違っているので、壁に合わせてそれぞれの部屋にどの作品を飾るか決めているのかなぁ、と感じます。
最上階の一室に、マウリッツハイス美術館のチケットやパンフレットにも使われていたフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』が展示されています。
ヨハネス・フェルメール:『真珠の耳飾りの少女』(1665)
こちらの作品はオランダ絵画黄金期に確立した「トローニー」と呼ばれる、人物画の中でも独立したジャンルの絵画作品です。トローニーとはオランダ語で「頭部の習作」という意味を持ち、特定されない人物の胸から上を描いた作品のことです。「トローニー」の作品の中でもこの『真珠の耳飾りの少女』あるいは『青いターバンの女』は特に有名です。
フェルメール・ブルーで描かれる彼女のターバンは必見です。ラピスラズリという鉱石から取られるこの美しいブルーは、ウルトラマリンブルーという名で知られています。当時は金と同じほどに高級な鉱石だったそうです。フェルメール絵画作品の特徴的な色ですね!
日本に上陸した際には、大勢の人だかりで中々近くで鑑賞する事ができないこの作品も、マウリッツハイス美術館では心ゆくまで『真珠の耳飾りの少女』を眺め癒される事ができます。手前には4人ほどが腰をかけられる椅子が置いてあり、手前にはフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』、後ろには次に紹介する『デルフトの眺望』と、前にも後ろにも贅沢な空間に包まれます。
ルーブル美術館の『モナリザ』とまではいきませんが、こちらの作品だけちょっとした柵が設けられていて、名画揃いのマウリッツハイス美術館の中でも特に丁寧に保管されている感じがあります。
それこそ「北のモナリザ」と呼ばれている『真珠の耳飾りの少女』ではありますが。
ちなみに私は日本に上陸した際にも何度か『真珠の耳飾りの少女』に出会っていて今回で3度目のご対面です♪ でもこんなにじっくり鑑賞できたのは初めてでした。何度見ても惹かれます。
ヨハネス・フェルメール:『デルフトの眺望』(1661)
これはこれは。私が先ほど寄った「デルフト」の有名な風景画です。
※同日のお昼に、フェルメールのゆかりの地である「デルフト」へ『デルフトの眺望』を求めるべく寄ってきました!是非興味のある方はこちらもご覧ください。この記事ではフェルメールの『デルフトの眺望』と本当に描かれた地点を見比べてご紹介しています。
こうして写真で撮ると、どうしても大きさがわかりにくいですが、この部屋で展示されている作品の中で一番大きな作品です。(念の為…98.5cm×117.5cm)
「デルフト」の空気感が伝わってきます。こちらの作品はデルフトでみた街並みをそっくりそのまま描いたのではなく、巧みに建物の大きさや位置に手を加えて描かれているそうです。それでもって「デルフト」の街並みと空気感を一枚のカンバスにぎゅっと詰め込んで最大限に表現しています。最も有名な風景画とも言われるフェルメールの傑作です。ずっと作品から離れたくないような気持ちになります。
ピーテル・パウル・ルーベンス:『ろうそくを持つ老婆と少年』(1616- 1617)
ろうそくからの暖かい光が印象的な一枚。劇的な明暗の対比を描くこの作風はカラヴァッジョからの強い影響も感じられます。
少年と老婆が持つろうそくの長さはそれぞれの寿命を表しています。
レンブラント・ファン・レイン:『自画像』(1669)
オランダ絵画黄金期の巨匠である、レンブラントが晩年に描いた『自画像』。レンブラントは生涯にわたって彼の自画像を描き続け、ロンドンのナショナル・ギャラリーで所蔵される『自画像』も彼が晩年に描いたものとして有名です。
レンブラント・ファン・レイン:『テュルプ博士の解剖学講義』(1632)
こちらも続いてレンブラントの作品です。先ほどの『自画像』は晩年に描かれたものでしたが、この作品は彼が26歳の頃に描いたもの。
作品名の通り、テゥルプ博士が解剖をし、腕の筋肉組織の説明をしている様子が描かれています。ちなみに、解剖されている人物は強盗の罪で処刑された者で、テゥルプ博士率いる外科医師会では年に一度こうした犯罪者を使った公開解剖が行われていたそうです。
解剖の様子は、目を背きたくなるリアルさ。
パウルス・ポッテル:『若い牛/雄牛』(1647)
牛や馬をはじめとした動物を描く画家として知られるパウルス・ポッテルの作品で最も有名な作品がこちら。
牛の様子は描かれてから数百年たった現在もなお生き生きとしており、非常に写実的です。この牛の姿は一匹のモデルがいたのではなく何匹もスケッチして描いたものだとか。彼の動物を描くことに対する熱意が伝わってきます。
その他の名作〜名前だけご紹介〜
今回写真とともにご紹介した作品の他にも有名な画家の作品が多く所蔵されています。
(彼らの作品も写真とともにご紹介できなかった点、申し訳ありません!)
- 「ヘンドリック・アーフェルカンプ」…『氷上の遊び』
- 「ヤン・ステーン」…『大人が歌えば子供が笛吹く』
- ルーベンスの『聖母被昇天』…『フランダースの犬』の最後のシーンで有名なアントワープ聖母大聖堂の祭壇画。その前段階として描かれた作品がマウリッツハイス美術館でみる事ができます。
などなどなど。
ギャラリー・プリンス・ウィリアムV
こちらの特別展も美術館と同じチケットで鑑賞できます。
2020年2月20日~6月1日 の特別展でジョージ・スタッブスの展示に出会いました。
ジョージ・スタッブス(1724~1806年)は、18世紀イギリスで活躍した画家として知られています。彼の作品の特徴は「馬」。こちらは、本特別展の目玉でもあるロンドンのナショナル・ギャラリーからはるばるやってきたの実物大の傑作、『ホイッスルジャケット』です。
作品の前には人だかりが絶えません。つるっとした馬の美しいボディーや毛並みが感じられます。彼の馬に対する愛がひしひしと感じられます。
実際に馬の骨まで展示されていて、彼が描いた馬の解剖図も印象的です。
サクッとマウリッツハイス美術館の雰囲気や名画をご紹介しました。
どうでしたでしょうか?
最後まで読んでくださった方は、きっとオランダ絵画黄金期の知識は並の人よりは結構ついてるはずです!
中々いけないという方も記事を読んで雰囲気を感じてくれたかと思います。是非おまけ②で載せている公式のAppもダウンロードして美術館を楽しんでみてください♪
これから鑑賞予定の皆さんも、紹介しきれなかった名画が山ほどありますので、私より見てやるぞっていう勢いで楽しんでくださいね♪
おまけ①〜駅までの道のり〜
帰りはハーグ中央駅からアムステルダムに向かいます。ハーグ中央駅までは徒歩15分ほど。洗練された駅からもみて取れるかと思いますがデン・ハーグは都会です!
美術館だけでなくて、ちらっと覗いた感じだけでも、古い建物が集まる「ビネンホフ」やショッピングストリート辺りなど観光すべきところが盛りだくさんです♪
おまけ②〜ガイドApp〜
インフォメーションのところで紹介したマウリッツハイス美術館のガイドアプリをご紹介して記事を締めくくりたいと思います。
日本からでもAppでマウリッツハイス美術館に所蔵される名画の数々を説明とともに楽しむ事ができます。
https://play.google.com/store/apps/details?id=air.nl.kissthefrog.MauritshuisMMT&hl=ja(Google)
https://apps.apple.com/jp/app/second-canvas-mauritshuis/id1171697726?l=en(Apple)
とっても便利ですよね!今回私が紹介しきれなかった名画もこちらで鑑賞できます。無料なので是非興味のある方は見てみてください。
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